2024年06月28日
今月の課題から、言葉を追う。(三題)

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こんにちは、あるいはこんばんは。
信州塩尻市、欅の森書道会、Web担当の宗風です。
お馴染みさまでございます。
ようやく梅雨入りをして、日の出ない肌寒い日曜日を過ごし、
止んだと思ったら週明け月曜日、一気に暑い。暑い。
もう体もなかなか付いて来ませんね。
だるいような…夏バテ前に夏バテのような、
五月病が長引いて六月も患っている様な、
スッキリしない時候ではありますが、
相も変わらず、本日もしばらくの間、お付き合い下さいませ。
23日にて国立新美術館で催されておりました
「第63回書象展」が閉会となっております。
足をお運び頂き、お目を留めて下さった皆様に厚く御礼申し上げます。
会員の日々の努力の粋をご覧になって頂き、
また諸先生方の作品に触れ、学びにもなったのではないでしょうか。
私、宗風はもう何年も県外に出ておりませんで、
信州からお出掛けされた方がいらしたら羨ましいな、と思うほどでございます。
さて、次回の欅の森書道会の月2回の研修日は、7月8日となっております。
これが7月の第1回目となりますね。
何となく…いつも通りの2週間先かと思っておりましたが、
3週先に設定されているのですね。競書の提出日でもありますので、
皆々様、みっちりと励んで頂いて、その成果、
作品を携えてお集まり頂ければと言う所です。
その一助となりますれば幸い…、
本日は競書誌「書象」2024年7月号の課題の中から、
課題になっている句、また詩の意味を簡単にお伝えできれば、と存じます。
ただの文字、ただの言葉として見るよりも、
そう詠んだ現代に名を遺す偉人たる皆様の思いを、
より深く感じ取ることが出来る…のではないかと言うことでして…。
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まずは隷書条幅の課題から。
「不若桂與蘭」
これは「桂と蘭とには若かず」と書き下し文。
「若かず」と書いて「しかず」と読みます。
曹植の「浮萍篇」(ふひょうへん)からの出典となります。
曹植は西暦192年の生まれ。後漢時代から三国の始めまでの方。
こうしてブログでお喋りを始めた後にも
何度か「書象」の課題として登場しておりますよねぇ。
同じ詩の中から、以下の通りでございます。
「人生忽若寓」
人生忽として寓のごとし
2024年4月号の基本課題。
「和樂如瑟琴」
和樂して瑟琴の如し
2020年9月頃の条幅課題。
ご記憶にございますでしょうか。
どちらも難しさを感じて書いた記憶がありますので、
ある意味で忘れられない5文字として、私には映ります。
「不若桂與蘭」は「肉桂や蘭の香りには及びません」と言う意味です。
この詩、そのものが兄弟との不和について、
棄てられた女性の心情に託して歌ったと言う…イワクツキな詩なんだそうで、
調べる中で「弟の不和」と出て来ていますが、
読み進める限りは、
女性の成人が15歳となっていた時代、15歳で嫁いで来て、
仲が良い、むつみ合った頃もあったのに、
今や新しい女に夢中ですよね、と言う状況。
きっと戻って来てくれると信じているのだけれど。
けれども。
この句の部分は、もっと良い香があると聞きますが、
昔から馴染んだ肉桂や蘭の香には及ばないでしょう、
新しい女じゃ物足りないのでは?と言う様な。
男性的な男性が書く女性の情念と言う様にも感じます。
「不若桂與蘭」
「與」は「与」の異体字、また新字体となっています。
よって、ともに、あたえると言った意味を持ちます。
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【仮名】の課題は良寛さん、良寛和尚の詩になります。
「世の中に まじらぬとには あらねども ひとり遊びぞ 我は勝れり」
生きる中で、世の人々と交わらない訳では無いけれど、
心のままに、何も気にせず独りで遊んでいることの方が、
なんだかんだ良いんだよねぇ。
…と言う意味です。確かにそれはそうかも。気楽ですよね。
でも、思うに独りならば独りなりの喜び、
誰かと、どなたかと共にあって楽しめば、それもまた楽しみ。
誰かがいれば自ずとしがらみも発生してしまうものですが、
しかしながら、独りとはまた違うお楽しみがあるものです。
さぁ、どう考える?と言う様な、
読んでみて聞いてみて、そんな風に抱く想いもある様な。
こう、今はSNSがはびこり通信も広がり、
海外ともお話できて、家にいても働くことが出来て、
とても便利になりましたが、逆にひとりの時間が減ったとも言え。
それよりもっとのんびりとした良寛和尚の時代においても、
人と人との煩わしさがどこかあるってぇのは、
人間の営みの本質が今も昔も変わらない…なんて感じますね。
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続きまして、トリを務めます三題目。
【基本】課題は、最近多いですよね。
「老子」からの出典となっております。
「老子」の第14章からの出典と考えられ、
原文は「迎之不見其首」とあります。「之」があるのですね。
「迎不見其首」
迎うるとも其の首(こうべ)を見ず。
迎えるとしてもその顔が見えない、見ることが出来ない。
そしてこの言葉の前には、随う(したがう)、
後ろからついて行っても後姿が見えないとあります。
禅問答の様な雰囲気。
前から来て相対する正面が見えない訳がなく、
反対に付きしたがっているのに背中が見えないなどあろうことか。
曰く、後を追おうにも影や跡がなく、迎えて首(こうべ)を見ようにも端や末無く、
あらかじめ待つこと叶わず。ただ六情五欲を除却して自然と玄道に帰入するとある。
古くからの「道」を通して目に見える今を見れば物事の起源へとたどり着く。
これを「道の綱紀を知った」と言い、14章の「玄道を賛えた(賛玄)」となる。
過去を知ること、受け止めることで今が始まる、開けると言う意味だと思います。
たぶん…「老子」は読めば読むほど自分自身との対話の様な本だと思いますので…。
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と、こんなところで。
もう数日で7月になってしまいますね。
もう2024年も半分、折り返し地点になるのだと思うと、
ええ、光陰矢の如しと感じますね。
欅の森書道会の総会においても、
先々のお楽しみ、また書道展などの発表がありました。
暑い日に負けない様、またご自愛もしつつ、
励んで参りましょう。
では、本日はここまで。
長らくのお付き合い、誠にありがとう存じます。
ではまた次回。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
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