2024年03月08日

正岡子規の漢詩「春晨」を読む。

正岡子規の漢詩「春晨」を読む。




こんにちは、あるいはこんばんは。
信州塩尻市・欅の森書道会、Web担当の宗風です。
こう、案外まだまだ3月に入ってからも雪があって、
春まだ遠からじの信州ですけれど、
そうですよねぇ、実際に「サクラサク」と言う名文句も、
お江戸、東京とは1か月ほどは違っていて、
卒業式に桜ではなくて、入学式…
もっと昔だと4月中旬が満開だったんじゃないでしょうか。
温暖化と言うヤツと思しきものがあって、
段々と早まっているのではないか…と言うところですが。

さて。
本日は、ちょっとだけ個人的な悩み相談に応じて頂きたい。
読んで頂きたいなぁ、と存じます。

現代と言うものは、スマホでもってインターネットの大海原を検索したらば、
たいていの事は分かる様になっております。
確定申告だって、スマホでe-taxでちょちょいの時代なんです。そうなんです。

そう思っていたのに、どうにも答えが出なくていけない。
そんな話題で、本日はお付き合いを願っておきますが…。




表題の通り。
俳人「正岡子規」、彼の作品は俳句だけではありません。
漢詩も残っておりまして。
日々、書道の根多として漢詩を探している中で、
日本の漢詩も知る様になりまして、そちらで出会った春の詩がございます。

「春晨」と言う題。「晨」は朝や夜明けを意味しますね。
何か参考になる文献に行き当たれば良かったのですが、
見つからずにおりまして、かろうじて書き下し文のみ。
こうしてお喋りするにあたり、
その書き下し文にあった違和感を個人的に直したりなんてしながら、
それこそ学びの世界と言うコトでございまして。
まずは一読、ご覧くださいませ。

「春晨」 正岡子規

春晨清如濯    春晨 清きこと 濯うが如く
晴日照自東    晴日 東を自ずから照らす

爨炊煙細細    爨炊 煙 細細として (爨炊=さんすい、ご飯を炊くこと)
出窓散薇風    窓を出でて 薇、風に散ず(薇=ぜんまい)

黄鳥鳴古木    黄鳥 古木に鳴く(黄鳥=コウライウグイス)
飛入荊棘叢    飛びて荊棘の叢に入る(荊棘=けいきょく、いばら、またそれらが生えた道)、叢=くさむら

淡雲翳残月    残月、淡雲に翳り(淡雲=うすくたなびく雲、翳=かげ、かげる、かざす)
影落空庭中    影は落つ 空庭の中(空庭=人のいない庭)

萬物得自然    萬物、自然に得る
吾生明日終    吾が生、明日終らん

苟不為利縛    苟も利の為に縛られずんば (縛られなければ)
便能與天通    便ち能く天と通ぜん (便ち=すなわち、すぐに、能く=よく、十分に)

在世豈不勤    世に在りて豈に勤めざらんや (豈=あに、どうして)(勤めようとしないのか、勤めるだろう)
読書味無窮    書を読み、味窮り無し (窮り=きわまり)


春の夜明けは、なんて清々しいのだろう
よく晴れて、太陽が東方を光で包む

飯炊きの湯気は細々と上がっている
風に揺れ、ぜんまいが風に散って行く

ウグイスは古木で囀り、
後、飛んで茨の叢へ入って行った。

残月に薄く雲がかかり、
誰もいない庭に影が落ちていた。

どんなものも自然と迎えるのだ。
私の人生は、明日にはもう終わってしまうかも知れない。

筍も、商いの為に縛られたりしなければ、
瞬く間に育って、天をつく程の背丈になっただろうに。
この世に生を受け、どうして“らしく”生きられないのか。
書を読み耽りながら食べてみるが、ホント旨いな。これ。



…と言う様に訳してみたものの。
これで良いのか、どうなんだろう…と言う相談をお願いしたいのです。

特に最後の一文、それまでの流れ。
春の景色が浮かびます。昼、夜と。
そうして自分の命が終わる様な…一言で表すならば、
絶望の言葉に感じる部分があった上で、
それこそ生の無情を嘆くような中で、
最後の最後に、味限り無しと言う事は、
成長できずに刈り取られるタケノコ君を成長前に食べたと言うことでは?
この詩の答えは何処にあるのでしょうか…。
通りすがりの細君に聞いてみますと、「書の味わいが増すと言う事では?」とのこと。
いやしかし、そうなると筍が利のために縛られることと繋がらないのでは…?
ともあれ、どちらも個人的な解釈ですので。むしろ、正解がお分かりになりましたら、是非ご教示くださいませ。

こうして向き合うとどこか春が待ち遠しいような気持ちに花が咲くように感じます。
もし良ければ、これも揮毫なさってみても良いかも知れません。

正岡子規の漢詩のご案内でした。

本日は簡単に、ここまでとさせて頂きます。

次回、欅の森書道会は3月11日、競書の締め切り日でありまして、
次いで25日、書象展の締め切り前の最後の1回となります。
どうぞ皆様、書の道に励まれますよう、ご健勝をお祈りしつつ。
それではまた。

ありがとうございました。

ありがとうございました。


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Posted by 欅の森書道会 at 21:30│Comments(0)言葉の解説
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