2023年05月31日
5月29日の教室開講日のご報告と「江東日暮雲」の解説。

・
・
こんにちは。信州塩尻市、欅の森書道会です。
さる5月29日、雨の中の教室開講日、お集まりいただき、皆様お疲れさまでした。
本日も気楽なところがよろしいんじゃないか…と言う所ですが、
一生懸命、書いてみますのでご覧になって頂けますと幸いです。
さて、まずは先々の連絡として、
欅の森書道会の総会、6月26日の件、
県展の募集アンケートなどのお知らせがありました。
当日、伺っておいででしょうか。
総会は龍胆での懇親会も設定されており出欠の確認が必要です。
県展はまずパンフレットの申し込みをするのに、
出展するか否かを確認する段階でした。
玄山先生も県展向けの意気あるお手本を揮毫して下さっているご様子でした。
書道教室としましては、
書象展の結果もあり、
昇段昇級試験の締め切りを越え、また少し落ち着いた時間になりましたね。
残すは総会を迎えて、ひと段落…なんてところでしょうか。
・
それでは、今回はもうすでに皆さん取り組んでおられると存じますが、
競書誌「書象」2023年6月号の漢字条幅課題、
「江東日暮雲(江東、日暮の雲)」について、ご解説致します。
この一節は、杜甫の詩「春日憶李白詩」、
「春日、李白を憶う」に由来します。
全文と書き下し文、ざっくりとした意味は以下の通り。
春日憶李白 杜甫
春日、李白を憶う
白也詩無敵
白や詩 敵無く
(白や=李白よ、君の詩は他に敵の無いものだ)
飄然思不群
飄然として思ひ群ならず
(飄然=世間に流されず、群れず、我が道を行く人だ)
清新庚開府
清新、庚開府
(庚=北周の詩人。庚信のこと。開府は官名。)
(庚開府のように生き生きとしたものであり)
俊逸鮑参軍
俊逸、鮑参軍
(鮑=南朝宋の詩人、鮑照のこと。参軍も官名。)
(鮑参軍のように才気に溢れている)
渭北春天樹
渭北、春天の樹
(渭北=渭水の北。樹木が春めいている)
江東日暮雲
江東、日暮の雲
(江東=長江の下流の一帯。李白の住む地域)
(君は江東で、日暮れの雲の下にいるだろうか)
何時一樽酒
何れの時か一樽の酒
(またいつか、酒樽を前にして)
重與細論文
重ねて與に細かに文を論ぜん
(文を細かく論ずることに興じたいものだ)
文人の文人に向けたラブレター…と言った風情を感じます。
才ある者だからこそ才あるものに焦がれる。
現代だと同じ趣味で集まる、論じる…と言えば、マニアな方々のオフ会…
ううん、これだと随分と高尚さが薄れてしまっていけませんね。
李白と杜甫には交流があり、
“残っているもの”が全てではないにせよ、
杜甫が李白について詠んだ詩は15首にものぼり、
恋焦がれている様にすら感じられるのに、
李白が杜甫を詠んだ詩、確実なのは2首、おそらくは…でもう2首なのだそうです。
性格の差、思いの差…
…何にせよ、詩仙、詩聖、そうした名声を欲しいままに出来るおふたり。
お酒と共に論じ合う姿はYoutubeでライブ配信すれば、
もうー…現代であっても大人気、実に興味深いものだと思います。
また玄山先生が、今月の硬筆課題を添削しながら教えて下さったのですが、
「知音」、“ちいん”と読みますが、
今月の硬筆課題も友の関係性を詠ったもので、
伯牙の琴の音を、また所作を鐘子期は覚えていて、
人の呼吸も含めて、思想も含めての「音を知る」と書いて「知音」と言う言葉がある、とのこと。
現代はパーソナルスペースを区切ったりもし、
友人、友情の関係性も当時に比べると多様性であり、
多様性だからこそ希薄さも増したりもし、混沌としている様な心持ちです。
杜甫と李白、伯牙と鐘子期の友情に触れると、
またお稽古に入る心持ちもちょっと違う様に思います。
ご参考になれば幸いです。
次回、欅の森書道会、教室開講日は、6月12日となります。
競書誌「書象」2023年6月号の課題提出日となっておりますので、
それまで意気あるお稽古に励まれますよう、よろしくお願い致します。
ありがとうございました。
ありがとうございました。