1月6日は欅の森書道会の研修日でした+条幅課題「患生於多欲」について

欅の森書道会

2025年01月07日 19:13






こんにちは、あるいはこんばんは。
信州塩尻市・欅の森書道会、ウェブ担当の宗風です。
あけました。たいへんにめでたい年明け…
…となっておりますでしょうか。
新玉の良いスタートを皆々様、お迎え遊ばされているでしょうか。

今年は巳年と言うことですが、
我が家では先日も紹介いたしました文鳥のピーちゃんが、
連休の間に成長をいたしまして、
嬉しいやら寂しいやら、そんな年明けとなっております。
まぁなんにせよ、たいへんに可愛らしい。いやともかく。
最近、ピーちゃんのことばかり考えているので、
ふっと気を許すと、すべてピーちゃんの思考であります。

さて。

本年もこちら、欅の森書道会のブログは、
のんびりと更新して参ります。
予定、また研修日のご報告、書道展、展覧会の告知など。
出来るだけ、言葉の解説も行って参ります。
書法は各々の先生方にご指導を賜るわけで、
課題の言葉、時代背景、意味などは無くても良いかも知れませんが、
2000年以上も前の文人の魂が込められたもの…
現代に伝わると言うことは、意義あるものと存じます。
知っていただくことで、一助となれば幸いでございます。



まずはご報告で…

新春、2025年1回目の欅の森書道会、
研修日が6日にありました。次回は20日となっております。

当日は大寒前のこの時節において珍しい雨でしたね。
雨の日は総じて、どこか暖かくも感じるものですが、
日の光も少ない1日で、どうにも底冷えがする…そんな日でした。
雨の中、お足元が悪い中で、お集まりいただきまして、
銘々様、お疲れさま、ご足労さまでございました。



先達てお知らせした「松本市美術館友の会、会員作品展」が,
14日の休館日を挟んで16日まで開催されております。
欅の森書道会の皆様からお預かりした作品も展示しておりますので、
是非、足をお運び頂けましたら幸いです。

そして毎年恒例、年に1回の挑戦ですね。
「書象展」のお手本について、
樋口玄山先生よりお声掛けがありました。
お手本のご希望を提出していただいて、先生にお手本を揮毫してもらいましょう。
書象展の作品提出、その締め切りは3月24日の教室の際に、となっております。
励んで行きましょう。

また1月26日には書象会の新年会がありますね。
こちらも皆さん、お出かけの際にはお気をつけて。




さてさて、本日は競書誌「書象」の2025年2月号漢字条幅より、
「患生於多欲」について申し上げます。

「患いは多欲より生ず」として「患い」は「うれい」と読みます。

「うれい」は「憂い、愁い、患い」と3種類あり、
それぞれ良い心持ちではない意味ですよね。ついでに比較してみますと、

憂い:不安や心配
愁い:強い悲しみ
患い:病気など、健康への障害

この原文を調べてみますと、ふたつの由来に当たりました。
時代を追い掛けてみても、それぞれ前漢の頃ですので、
そう遠くは離れていないものです。

ひとつは、
司馬遷の「史記」、こちらは歴史書です。
こう言うことがあったよ…の文章。この巻92、淮陰侯列伝第32に、
「患生於多欲」があります。

もうひとつは、
「准南子(えなんじ、わいなんし、とも)」、こちらは思想書です。
紀元前122年まで生きた淮南王劉安が時の学者を集めて編纂したもの、とあります。

それぞれ文としても別の在り方です。

「患生於多欲」、良くないこと、患いとは多欲から生じる。
欲張りは良くないよね~…と言う意味としては同じ。
前後が違うと言うことは、もうこれは人の生きる道として、
紀元前からも「そうだよね、そりゃそうさ」の域に達していた…
…と言うことではないでしょうか。
今だって同じですよね。人の性は2000年では変わらないのですね。

「史記」では、

「患生於多欲、而人心難測也」とあります。

患いは多欲より生じて、人の心は測り難しければなり。

この項を読んでみると、身を尽くして主君に使えようとする武人に、
諭す方より出た言葉で、
死に物狂いで全乗っかりで「やってやろう!」と、
まわりが見えなくなっている様子で、
どんなに仲が良い人でも何がきっかけで殺し合いに発展するような、
そうしたことも起きているじゃないか。
人の心は推し量れるものではないから、
多欲よりどんな悪いことが生まれるかも分からないから、
もうちょっと落ち着きなさいな…と言ったような雰囲気です。
だいぶ略しておりますが。
実際に、戦乱の世の中ではありますから、
信じすぎも危ないよ…と言うのは、そりゃあ確かに、です。
この一節から「不世出」と言う言葉が出たのだとありました。


「准南子」では、

「福生於無為、而患生於多欲」とあります。

「福は無為に於いて生まれる。患いは多欲に於いて生ずる」

良いことは無欲から、悪いことは多欲から。
思想書らしい言葉ですよね。

書象誌の編集部さん方の心は、のみぞ知る…と言うところですが、
どちらかと言うと後者が出典のようにも思います。
新年の寿ぎに、ゆるゆるっとしてしまうところで、
少しだけ帯をギュッと締めるような…それも必要ですものね。

…と言うような解説を今後も続けて参りますので、
是非ともお付き合いを願っておきます。
書象会の皆様には是非とも口コミで広めていただきたいです。
是非とも。

また私自身が学者さんではないものですから、
私自身の学びと解釈の末ですので、
逆に気楽に、「こんな感じかなぁ」と眺めていただけますと、
知の一滴になりますと良いのかなぁ、というところで。

本日はちょうどお時間となっております。
お開きと相成りまして、それではまた次回。

新年のご挨拶と患いは多欲より生ずの一席でございました。

ありがとうございました。

ありがとうございました。

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